渡辺私塾文庫

リーフ

所蔵品目録


【28】古沢岩美 関係本


 古沢氏は、平成12年88歳で他界された魅力的な洋画家だが、挿画限定本にも大変理解のある作家で、多くの版画や挿画で美しく限定本を飾っている。シュールな作風となまめかしい女体画で有名ではあるが、1960年から1993年の長きに渡って制作した銅版画集「修羅餓鬼」は、彼のライフワークであり、後世必ずや、ゴヤの版画集「惨禍」と並び称せられる作品となるであろう。加害者と同時に被害者でもあった、中国での三年間の地獄の戦争体験による苦渋と慚愧の中から生み出された30枚の銅版画は、戦争という大きな流れの中での個の無力さ、悲しみ、残虐さを、見事に具現化し、強烈な反戦芸術作品になっている。
 氏が37歳の時、「みつ”ゑ」525号(昭和24年8月号)「ありがたきかな四面楚歌」で、氏の作品に対する石井柏亭氏の「似たり寄ったりのグロテスクな気味悪さ」という批評や、今泉篤男氏の「低俗な興味で一目をひくが、いい意味のエロティシズムをも殺している。」との評に反論して、氏の作品「「なぐさめもだえ」は最も惨鼻を極めた湘桂作戦で日本軍24万の内、行軍と栄養失調で8万までが干からびて死んでいった修羅の中でふてぶてしく生き続けた慰安婦が主題になっているのです。現実は空想を絶することがあります。」と書いている。グロテスクなどと非難している背後で、人類は遥かに陰惨でグロテスクな事をやっているのだぞ、現実の方が空想より、芸術より遥かに悲惨でグロテスクだぞ、しかも現実、時代が想像力より遥かに先行するのだぞ、と言いたかったのだろう。そして、そのような人類を救う唯一の光明は、「慰安婦」に象徴される女性、母性だったのかも知れない。現実、時代を超越出来るのは唯一艶めかしい無敵の女性だと本能的に思ったのかも知れない。だとすれば、氏が「修羅餓鬼」を制作している傍ら、隠微で無敵の女神のごとき女性像を、何故営々と描き続けたかの説明がつく。
 もう既に私は確信している、古沢岩美は、日本美術史上最高の反戦画家だと。あの女性達は、人類救済のため古沢が創りだした無敵の女神達だと。

  1. 修羅餓鬼、悠思社、1993、限定50部 ,(3部所蔵) (写真)
  2. 秘めごとの歌、美術出版社、昭和59年、愛蔵50部本
                             特装200部本
  3. デッサン集、古沢岩美美術館、昭和53年、愛蔵200部本、 限定1000部本
  4. 飛べない天使、バベル社、昭和46年、150部本
  5. デロスの蝸牛、文化出版局、昭和51年、100部本
                             普及本
  6. 古沢岩美画集、美術出版社、昭和49年
  7. 月と黒子、リーチ社、昭和37年、80部本
                        700部本
  8. 古沢岩美全版画、美術出版社、平成9年
  9. 花と女、ノーベル書房、1989
  10. 千夜一夜物語、同、昭和54年
  11. 女おんな、裸婦デッサン集、ノーベル書房、1985
  12. デッサン集、ギャラリーブロイセン、昭和48年、愛蔵50部本、 限定200部本
  13. 旅のスケッチ、ノーベル書房、平成3年
  14. 裸婦裸婦画集、1982,ノーベル書房、限定1000部
  15. EROTICO、昭和44年、現代新社、限定2000部
  16. 同                      愛蔵版限定50部
  17. 裸婦古沢岩美、1983,学習研究社
  18. 花 昭和54年、アート社
  19. にょたい 裸婦デッサン集、昭和58年、ノーベル書房
  20. 裸婦デッサン集、昭和45年、私家版



所蔵品目録

【1】アルス日本児童文庫

【2】恩地孝四郎

【3】集古十種

【4】中村忠二

【5】美術書・稀覯本・草稿・画稿・画帖

【6】洋書

【7】雑誌


【8】日本画

【9】油彩画1

【10】油彩画2

【11】版画

【12】海外版画


【13】補遺1


【14】補遺2

【15】陶板、金工、ブロンズ、石膏、染織

【16】江戸本

【17】下絵

【18】妹尾正彦

【19】海外油彩画

【20】洋書2、生田耕作旧蔵本

【21】関野準一郎
 
【22】川上澄生

【23】横田稔

【24】佐々木桔梗、プレス・ビブリオマーヌ関係本

【25】稲垣史生原稿

【26】久保貞次郎

【27】神崎温順関係本

【28】古沢岩美関係本

【29】高梨一男関係本

【30】芹沢_介関係本

【31】西川満関係本

【32】竹久夢二関係本

【33】金守世士夫関係本

【34】奥の細道画冊

【35】田川憲関連作品


◆蒐集雑感


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