ゲルマラジオと高校物理(2)

 

 (7) 真岡市での電界強度
  真岡市の木造家屋の2階から約5mビニール線を垂らしゲルマラジオのアンテナとしたときにどれだけの電圧が発生するか実測した。電圧の測定はコイルの両端にオシロスコープのプローブを×10に設定し、入力インピーダンスは10MΩで測定した。

 写真左および右はNHK第1を受信したときの信号である。オシロスコープは500mV/DIVの設定、写真よりおおよそ実効値は200mV。実効長を2.5mとすれば、電界強度は80[mV/m]となる。なお×1に設定すると感度は10倍になる計算だが、入力容量200pFが加わるため、共振周波数が狂い,信号は観測できない。実測した電界強度は予想外に強く驚いた。NHK第1と第2が確認出来た。  電界強度は距離に反比例する。周波数によっても変化する。真岡市とNHK菖蒲久喜ラジオ放送所の直線距離が54kmあり、参考文献2)によると約50mV/mと見積もられている。大きな違いはない。  同調回路を使わずにアンテナに誘起される電圧をオシロスコープで測定すると、50Hz、1.8Vの電圧が計測される。並列共振回路は共振周波数以外の電波を取り除き,雑音を減らす働きもあることが実感できる。
(8) 並列共振回路と同調回路
  ゲルマラジオでは選局に並列共振回路を利用する。市販の部品はコイルが330μH,最大260pFの可変コンデンサ(バリコン)を使う。  ラジオでは選局に並列共振回路が使われる。同調回路と呼んでいる。並列共振回路では共振周波数でインピーダンスは理想的には無限大になる。この結果共振周波数の信号だけが浮かび上がり,その他の周波数の信号は短絡されてアンテナからアースに捨てられる。  短いアンテナ(10m程度)と,1/4波長グランドプレーンアンテナ(現実には考えられない)を同調回路につないだときの,信号の選択度をシミュレーションした。アンテナの違いは直列につながっている抵抗の値で示している。37Ωは共振状態の1/4波長グランドプレーンアンテナの内部抵抗,3kΩは短いアンテナの1MHzにおけるリアクタンスである。
 これは極端な例であるが,1/4波長グランドプレーンアンテナをつないだ場合,アンテナのインピーダンスが低く,同調回路で信号を選択することができない。つまり下図のようにアンテナをつなぐと混信がひどく選局できない。実際にはここまで極端な例はないと思うが,アンテナのつなぎ方で感度や選択度が変化する事をブレッドボードに組んだ実験回路で確認した。

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