新世紀・公明クラブ
会 派 視 察 研 修
1月25日〜27日にかけて、中村が所属する会派
「新世紀・公明クラブ」
では、
熊本県水俣市、宮崎県宮崎市へ会派視察研修へ赴きました。
今回は、
@環境との共生を目指した地域づくり
ANPOやボランティア団体の育成・支援
の2つがテーマでした。
今回の視察では、下記の金額が公費でまかなわれました。
(3日間:議員一人あたり) .
総額
112,330
円
出所
政務調査費
内訳
交通費、宿泊費、相手先みやげ代
※ 当然のことですが、視察中の飲食代は、全て議員の自費負担です。
なお、視察の詳しい所見については、
以下
をご覧ください。
1.水俣市「水俣エコタウン」
(1)水俣市の概況
水俣市は、熊本県の最南端に位置し、鹿児島県出水市及び大口市に隣接している。市域の約7割は山林・原野で占められており、不知火海に注ぐ水俣川河口に市街地を形成している。
チッソ株式会社の企業城下町として栄えた同市は、昭和31年の時点で人口5万人余りを擁する工業都市に発展した。しかし、「公害の原点」とも称される水俣病の発生により、地域社会の崩壊や経済の疲弊が見られ、平成2年には人口3万4594人となり、過疎地域の指定を受けている。
そうした中、世界に類を見ない公害を経験したまちとして、その教訓を活かしたまちづくりを進めるため、平成4年から環境モデル都市づくり宣言を行い、平成11年にはISO14001を取得している。
・人口=3万278人(平成15年6月1日現在) 高齢化率=27.9%
・財政力指数=0.332
(2)水俣市の取り組みについて
@水俣市立水俣病資料館
平成5年1月にオープンした水俣病資料館は、過去の悲惨な歴史を風化させることなく、貴重な資料を後世に伝えることを目的として建設された。現在、医学・行政・司法関係の書物や新聞記事のスクラップ等、約4000点の資料を所有し、そのほかに、当時の様子を伝える写真や映像なども展示されており、来館者に水俣病の恐ろしさを伝えている。また、10名の水俣病患者が「語り部」として、肉体的苦痛や差別を受けた経験を伝え、水俣病問題を正しく認識してもらえるよう情報を発信していることも、大きな特徴の1つである。
同資料館はオープン以来、年々来館者が増加しており、国内・外から年間5万人が訪れている。公害学習、環境学習もさることながら、人権教育の場としても活用されており、「環境モデル都市」水俣のシンボル的存在と言えよう。
A環境モデル都市を目指して…
水俣市では以前から、市民レベルでの環境保全活動は熱心に行われてきたようだ。その中心的人物が、同市職員の吉本哲郎氏(現:生涯学習課長)である。地域の自然、歴史、人的資源を見直す取り組み「地元学」を提唱してきた吉本氏が環境対策課長に就任後、水俣市では実にユニークな施策が次々と打ち出されてきた。
その具体例を以下に挙げてみたい。
◎環境にいい暮らしづくり ・ごみの21分別 ・地区環境協定
・ゴミ減量化女性会議 ・エコショップ認定制度
・我が家のISO
◎環境にいい地域づくり ・ビオトープの創造 ・水の経路図づくり
・地域資源マップづくり ・グリーンツーリズムの推進
・環境学習都市づくり ・環境共生モデル地域の形成
・学校、保育園、幼稚園版ISO
・旅館、ホテル版ISO
◎環境にいいものづくり ・水俣ブランドの農作物 ・環境配慮型の漁業進行
・環境マイスター認証制度 ・環境ビジネス
・畜産版ISO
◎国内外への発信 ・JICAの受け入れ ・『環境水俣賞』の創設
・環境自治体会議(平成12年5月開催)
・水銀国際会議(平成13年10月開催)
・こども国連環境会議(平成14年8月開催)
このうち、学校、保育園、幼稚園ISO等については、それぞれの機関で独自の目標を設定してもらい、それをクリアした時点で市が認定を行うという極めてユニークなものであり、市民1人ひとりが環境負荷の低減や環境保全に取り組む契機となっているようである。BR> なお水俣市では前述の通り、平成11年にISO14001の認証を取得しているが、15年9月からは、独自の環境規格を充実させ、市民が監査委員となり成果をチェックする「自己宣言方式」に移行していることもここに付記しておきたい。
B総合リサイクルセンター
海沿いのチッソ関連工場跡地(21.8ha)を活用して平成11年に整備された総合リサイクルセンターには、現在8つの事業所が操業している。
・みなまた環境テクノセンター ・家電リサイクル施設
・びんのリユース、リサイクル施設 ・使用済オイルリサイクル施設
・し尿を原料とした肥料製造販売 ・使用済タイヤリサイクル施設
・廃プラスチック複合再生樹脂リサイクル施設
・建設廃材、アスファルトリサイクル合材製造施設
このうち、「みなまた環境テクノセンター」は産学官が連携して、廃棄物の有効利用、水質調査、エコビジネスの創出等の研究が行われており、総合リサイクルセンターのシンクタンクとしての役割を果たしている。
現在同センターでは120人の雇用を生みだしており、今後も環境・リサイクル関連産業の誘致・事業化を進めていく予定とのことである。この取り組みについては、平成13年2月に国から「エコタウン事業」として、さらに16年1月には「水俣環境・リサイクル産業特区」(土地開発公社造成地の賃貸の容認)として認証を受けている。
(3)所見
真岡市においても、平成16年12月定例議会で、「環境都市宣言」が採択され、さらに17年度からは「環境基本計画」が実施されることになった。今回、熊本県水俣市を視察地として選んだ理由は、水俣病という悲惨な歴史の反省から、同市が環境保全・資源リサイクルの分野で、他の自治体の先駆けとなる子事業を進めているからに他ならない。
まず大変感心させられたのは、市民が環境問題について学び、実践する場が、家庭・職場・学校などにおいて実にキメ細かく設けられていることである。これらの施策が実施された背景には、市役所内に吉本哲郎氏という、中心的役割を果たした人物がいたことも大きかったのではないだろうか。真岡市において環境基本計画を進める際、市民・事業者・民間団体などで構成する「環境パートナーシップ会議」が重要な役割を担う訳であるが、市役所内にも環境問題に精通した人材を置く必要性があると考える。
また、本来は迷惑施設として見なされ、住民から敬遠されがちな廃棄物処理施設について、「ゴミが資源になることを市民が理解するための学習の場」として捉え、産業の核に据えようとさえしている水俣市の考え方には、大変興味を引かれた。悲惨な公害を経験し、その教訓から、自らの環境を守り育てたいという強い意識があるのだと思われる。
さて、今回の視察で私たちは、「水俣市立水俣病資料館」を最初に見学した。昭和31年に1人の医師によって発見された水俣病は、現在までに申請者1万7000人、認定患者2265人、死者1517人を数える世界でも例を見ない規模の公害となった。資料館に展示されていた資料、写真、そして映像を通して、この公害の恐ろしさを私たちは改めて痛感した次第である。
幸いなことに本市ではこれまで、そうした公害は発生しなかった。しかし現状を容認すればよい、ということでは決してないはずである。自然の大切さを市民1人ひとりが再確認し、後世まで持続可能な社会を構築するために、平成17年度から始まる「環境基本計画」が謳い文句に終わることなく、有効性をもって実施されるよう強く求めたい。
2.宮崎市「市民活動推進事業」
(1)宮崎市の概況
NHK放送文化研究所編「現代の県民気質」によれば、
Q1.あなたが住んでいるところは住みよいと思うか?
Q2.お金というものはしばしば人間を堕落させる汚いもの?
Q3.ボランティア活動をしてみたいと思うか?
という3つの質問に対して「そう思う」と答えたのは、宮崎県が最高だった。この調査結果は、宮崎市がボランティアによるまちづくりで、地域コミュニティを再生しようとしている1つの根拠になっている。
だが、宮崎市が現在のようにNPOやボランティア団体の育成・支援に力を入れるようになったのは、平成6年、現在の津村重光市長が就任してからのことであるようだ。就任直後に姉妹都市である米・バージニアビーチ市(平成4年締結)を訪れた津村氏は、人口43万人の都市で24時間救急医療サービスまでボランティアが担っている現状に驚いた。その後「10年でバージニアの半分はいくぞ」と号令をかけ、平成9年からこれまでにバージニアビーチ市へ、100名を超える市民や職員を派遣した。派遣された人々は一様に、その活動ぶりにショックを受け、宮崎市における市民活動の核になっていったようである。
・人口=30万9825人(平成15年6月1日現在)
(2)宮崎市の取り組みについて
宮崎市ではまず、ボランティア活動等の社会貢献活動を支援し、これらの活動が行われやすい環境づくりを進めて行くための指針として、平成10年12月に「宮崎市ボランティア活動支援基本方針」を策定した。
また12年8月には、NPOやボランティア団体の活動拠点として、宮崎市民プラザ(市役所本庁舎隣り、旧市民会館跡地)3階に、「宮崎市民活動支援センター」がオープンした。同センターには、会議室や交流コーナー、メールボックスやパソコンコーナー等が設けられているほか、ボーイスカウト、PTA、老人会等の事務局の部屋も常設されており、終日市民の行き来が絶えない。ちなみにセンターの管理運営、各種団体のコーディネートについては、特定非営利活動法人(NPO法人)「NPOみやざき」が担当している。
さらに13年度、下記のような取り組みが行われ、宮崎市のNPO・ボランティア団体に対する育成・支援策はより充実することになった。
@市民活動推進条例の制定
市民活動をより活性化していくためには、市民・市民活動団体・事業者・市が、それぞれの役割に基づき、対等な立場で連携することが必要である。このためには、市民活動推進のための基本的事項を定め、広く市民等の理解と参画を得ることが不可欠であることから制定に取り組んだ。
A市民活動支援基金
活動団体実態調査において、行政に希望する支援策として、第1に「活動に対する財政支援」が挙げられた。この調査結果や市民懇話会などでの意見を反映し、基金の設置となった。
特徴として際立っているのは、基金に寄せられた寄付金に、市が同額を上乗せして基金に積むという、全国でも珍しい「マッチングギフト方式」を採用していることである。前年に受け入れた寄付金額の2分の1と市の上乗せ分の合計に相当する額(=1.5×前年寄付金額)を基金から取り崩して、当該年度の市民活動支援補助事業に充当している。単年度あたりの補助金額は300万円を下限とし、600万円を上限とした。
なお補助金の交付団体については、大学教授やマスコミ関係者等で構成する「市民活動推進委員会」によって協議され、選定が行われる。
B市民活動推進課の設置
市民活動の推進を図るために、従来の企画課のボランティア担当班を発展させ、新たに市民活動係と男女共同参画係の2係を有する「市民活動推進課」を設置した。
行政組織のNPO・ボランティア団体を担当する窓口は、時として社会福祉協議会との縦割りが問題視されることが多い。(真岡市も決して例外ではない)宮崎市では、市民活動推進課と社会福祉協議会がデータを共有化することによって、こうした課題の克服に努めている。
また、自治会の窓口については、宮崎市でも総務課が担当しており、業務の一本化が今後の課題であるとのことだ。ちなみに愛知県刈谷市では、自治会についても、ボランティアを担当する課が一括して業務を行っているそうであり、真岡市としても今後の参考になると思われる。
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さて、こうした宮崎市の取り組みは徐々に実を結んでおり、市民活動支援センターに登録するNPO・ボランティア団体は、平成12年度に180団体であったものが、平成15年度は478団体と、約2.7倍に増加している。
また宮崎市の場合、特筆すべき点として挙げられるのが、前述の市民活動支援センターの管理運営等、19の市の事業についてNPO・ボランティア団体に業務委託をしていることである。特に市立図書館については、平成12年度より、特定非営利活動法人「MCLボランティア」に業務委託している全国でも珍しい公立図書館である。現在416の個人と団体が、ボランティア活動員(窓口業務と行事・イベント担当)として登録している。
(3)所見
今回の宮崎市視察を前に、私たちの頭に浮かんだのは「NPO等に業務委託をした場合、従来と比較してどの程度の歳出削減ができるのか」というごく単純な疑問であった。だからこそ、宮崎市立図書館を見学した際、担当者から「削減した歳出は、それほど大きくない」という答えが返ってきたのは意外というしかなかった。
だが、別の視点から考えると、次のようなことが言えるのではないだろうか。やる気と情熱を持った市民が、市の事業に参加するということは、サービスの向上が期待できるということ。また、市民がまちづくりについて、今まで以上に関心を持つ機会が増えるという利点もあると言えよう。
さらに平成19年以降、第1次ベビーブーム世代が定年退職の時期を迎え、生きがい対策としての受け皿をどうしていくのかという課題等までを考慮すると、真岡市も宮崎市と同様の取り組みは、やはり今後必要にはなってくるように思われる。
しかし、今回視察した宮崎市と真岡市の現状を比較した場合、次のような課題が残されているのではないだろうか。
市の事業を委託するNPOやボランティア団体に対して、研修の場をどのような形で設けるのか。
宮崎市の「NPOみやざき」のような、いわゆる中間支援団体(NPOの活動を支援する目的の組織)をどのように育成していくか。
現在は生涯学習課と社会福祉協議会に分かれ、活動する市民からも不便さが指摘されている窓口をどうするのか。
多くの自治体で共通の課題として挙げられる、「活動場所の確保」「資金面での支援」についてはどうするのか。
真岡市でも平成18年度から「指定管理者制度」の導入が予定され、いよいよ本格的に市民と行政の協働によるまちづくりが始まることになる。あと1年という極めて短い期間で、これらの課題を克服することが求められている。
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