文教常任委員会 行政視察報告 (平成16年) 


文教常任委員会では、7月13日〜15日の3日間、
不登校対策、2学期制の導入、生涯学習事業の3つをテーマに掲げ、
石川県金沢市と福井県大野市へ行政視察に赴きました。


 今回の視察では、下記の金額が公費でまかなわれました。
(議員1人あたり). 

総額 91,980 出所 議会費のうち旅費
内訳 交通費、宿泊費、相手先みやげ代、議員日当など
※ 当然のことですが、視察中の飲食代は、全て議員の自費負担です。
※ 議員日当(3,300円×3日)の是非については、
  今後も課題としていきたいと考えております。



なお、視察の詳しい所見については、以下をご覧ください。





(1)不登校対策

 本市では今年度より、適応指導教室を真岡中学校から青年女性会館に移転させ、不登校児童生徒の環境改善に努めてきたところである。しかし、これだけで不登校問題が全て解決できるわけではないことは明らかである。私たちは問題解決のスタートラインに立ったに過ぎない。そうした意味から、今回の金沢市の視察は、本市が『次の一手』を進める上で、大変参考になったと考える。
 金沢市の不登校対策は平成3年ごろから行われており、適応指導教室『そだち』については、現在市内2ヶ所で開設されている。しかし、今回特に我々の目をひいたのは、@不登校を未然に防止する学校づくり A学校に通えるものの、教室には入れない児童生徒へのアプローチといった点である。
 まず、@の不登校を未然に防止する学校づくりであるが、金沢市では毎年6月ごろから、小学6年生を対象にした中学校公開期間を設け、各中学校の生徒会役員が学校案内するという制度がある。これは中学校に進学する際、環境の変化についていけず、不登校者数が急増することに着目して始められたものである。また中学校に進んでからも、アンケート形式による悩み調査と、それに基づいた面接を全生徒を対象に実施しており、生徒の心の変化を把握するとともに、不登校の未然防止に大きく役立っているようである。加えて、市内にある『教育プラザ富樫』に電話相談室を開設しており、専門家によって、思春期の子どもを抱える親についても支援している。
 Aの学校には通えるものの、教室には入れない児童生徒へのアプローチについては、金沢市では現在『中学校学習支援員』という制度が導入されている。『保健室登校』などの言葉に代表される、教室に入れない生徒を対象にしたものである。支援員の大半は、教員免許を持っていないが教育に関心のある市民で、金沢市では各中学校長の推薦を受けたものを採用している。今、教育界では不登校生徒、別室登校生徒の学力維持が大きな課題となっている。そうしたことを考慮すると、この中学校学習支援員制度は、検討する価値があるのではないだろうか。


(2)2学期制の導入

 次に2学期制の導入についてであるが、金沢市では平成14年度から2年間かけてモデル校での施行を実施した後、今年度から全ての小中学校で導入されている。
 2学期制と聞くと、通知表作成など教員の負担を減らし、生徒と向き合う時間が増えるなどの効果を考えがちである。また、日本では明治33年以降義務教育については100年以上にわたって3学期制を維持してきた歴史もあり、「2学期制は日本の教育文化になじむものなのか」という不安の声があるのも事実である。
 しかし、仙台市などの各自治体が相次いで2学期制を導入している最大の理由は、週5日制に伴って課題となっている授業時間の確保にあることを見落としてはならない。金沢市教育委員会も「学校週5日制と2学期制は本来1セットで考えるべきである」と指摘している。
 現在文部科学省では、授業時間を年間最低980時間確保するよう指導している。だが、完全週5日制実施後、授業時間確保全国の学校が苦慮していることは周知のとおりである。
 そうした中、金沢市では2学期制導入後、1,020時間〜1,030時間の授業時間が確保できるようになったという。また、これまで学期末で慌しかった7・12月が落ち着いて学習できる時間に充てられていること、1つの学期が長くなることを活かして、繰り返しの指導や単元ごとの見直しなどが可能になったことも考慮すると、かなり効果があるのではないだろうか。
 当然のことながら、2学期制にも課題は存在する。金沢市では導入前の時点で、多くの保護者から通知表が2回になることに対して懸念の声が出ており、実際に仙台市では導入後に教員からそうした指摘がされていたそうである。
 そこで金沢市では、『学習達成度連絡票』を年5、6回発行して、単元ごとに、しかもテストだけではなく、ノート・レポート・実技・作品などから多面的な評価を行うようになった。この試みについては、子どもたちにもおおむね好評のようだ。
 しかし、『学習達成度連絡票』の発行などで、教員の負担は増えているのが実情である。その点について、金沢市教育委員会は、「教員にとって生徒と向き合うために仕事が増えるのはやむを得ないこと。それが嫌ならば辞めてもらう以外ない。2学期制導入の目的には教員の意識改革も含まれている」との見解だった。
 もし仮に、真岡市が2学期制を導入する場合は、現場の教職員の声を充分に聞くと同時に、負担となっている事務的業務や学校行事の見直しは不可欠である。しかし、それらの課題を差し引いても「2学期制の導入は、仙台市や金沢市以上に、この真岡市でこそ必要なのではないか」と私たちは考えるのである。本市独自の教育事業には、1週間単位で授業時間が削られる大型のカリキュラムが含まれている。子どもたちの授業時間を適切に確保するためにも、2学期制導入については検討する必要があると思われる。
 

(3)生涯学習事業

 最後に、福井県大野市で視察した生涯学習事業『大野明倫館』について報告する。大野市は人口約3万9,000人の市として小規模ながらも、随所に古い街並みが残り、さらには400年以上の歴史が誇る七間朝市や、名水百選にも選ばれた御清水など、独自の地域文化を育んできた城下町である。事業名にもなっている明倫館とは、幕末に大野藩が開設した藩校の名である。藩士の子弟のみならず、志願した者は誰でも入校できたという、当時としてはユニークな教育機関だった
 大野市長の天谷光治氏は、初当選直後の平成7年から『環境保全』と『人づくり』を市政運営の柱に掲げてきた。その手始めとして、『大野明倫館』の前身である『越前大野平成塾』を開設。まちづくりのリーダー養成を目的として、月1回の例会や特別講義などが行われた。この間、平成7〜9年度、8〜10年度、9〜11年度と、3年連続のスダレ方式で計3期、約100名の市民が参加している。しかし、当初期待されたような、施策に活かせる提言づくりには至らなかった反省から、カリキュラムを見直し、平成10年度から『大野明倫館』に事業名を改めて、生涯学習の柱として位置づけるようになった。
 この、『大野明倫館』の特徴は次の4点に集約できる。  
  1. 学習テーマが朝市の活性化、子育て、環境や都市政策など、まちづくりの問題に絞られていること
  2. 地元大学との連携を図り、福井大学助教授、法政大学教授などの研究者を迎えて事業を進めていること
    (この人脈により年間100万円の予算で、各分野の第一人者を講師として招いている)
  3. 1期を2年間としているため、深く掘り下げた学習・調査が可能であること
  4. 市民のみならず市職員にも参加させていること
 本市の類似した事業としては、昨年度実施された『市民企画セミナー』が挙げられる。しかしながら、あくまでも学習と運営の一切を市民に委ねていた点や、1期1年であるため、学習の継続性に課題が残った点など、大野市の事業と比較すると差があるように感じられる。本市としても、市民にまちづくりへの理解と関心を深めてもらうための、学習・研究・討論の場が必要であることはいうまでもない。さらに、より多くの市民に参加してもらうために、PR手段などについても今まで以上の工夫が必要なのではないだろうか。
 大野市で今年度からスタートした『大野明倫館 第3期』では、30代の青年10名に加え、4名の高校生が参加しているということも、ここに付け加えたい。





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