中 村 か ず ひ こ   
   個 人 視 察   


2月8日〜9日にかけて、中村は、個人視察を行いました。
今回は、現在真岡市でも制定に向けて議論が進められている
『政治倫理条例』について専門家お2方にお話をお聞きしました。


 今回の視察では、下記の金額が公費でまかなわれました。
(2日間)   . 

総額 84,240 出所 政務調査費
内訳    交通費、宿泊費
※ 当然のことですが、視察中の飲食代は、全て議員の自費負担です。



なお、視察の詳しい所見については、以下をご覧ください。






○日  時  平成16年2月8日(日)〜9日(月)
        (ヒアリングは8日の午後1時〜5時30分)
○場   所  福岡県福岡市 ホテルニューオータニ博多
○目   的  政治倫理条例の制定について
○ヒアリングを行った相手  斎藤文男氏(九州大学名誉教授)
              糸山正義氏(政治倫理九州ネットワーク事務局長)


(1)視察のねらい

 真岡市の前市長等による受託収賄事件(平成14年)が契機となり、県内各自治体において『政治倫理条例』の制定が進むようになった。その震源地とも言うべき本市においても平成15年9月、議会内に『政治倫理条例検討委員会』が発足し、条例制定に向けた議論が行われている。
 しかし、話し合いが続けられていく中で、『議員の正当な活動をも拘束しかねないものではないか』『政治倫理条例は立候補しようとする人材に制限を加えるものであり、憲法に違反するのではないか』といった疑問が、委員会のメンバーの中から出てくるようになった。そこで、福岡県内においてこれまで政治倫理条例制定に関わってこられた専門家2名に、お話を伺おうと考えた。
 これまでの疑問点について整理し、そして政治倫理条例の効果について再度検討を進めることが、今回の視察のねらいである。


(2)福岡県内の現状
 そもそも政治倫理条例は、1983年(昭和58年)に大阪府堺市で初めて成立したものである。当初の条例は、アメリカの『政府倫理法』に倣っており、市長と議員の資産公開に主眼をおいていた。
 福岡県内では、1986年(昭和61年)に飯塚市が初めて条例制定に踏み切った。福岡県は96市町村のうち72までが、同条例の制定を済ませ(平成15年4月現在)、専門家の間では、俗に『政倫銀座』と呼ばれている。
 各自治体の条例を通読すると、従来からあった資産公開に加えて、平成5年あたりから以下に記したような新しい内容が加わった。

 @芦屋町→特定業者の推薦・紹介の禁止、
      職員採用への介入禁止
 A小竹町→企業・団体献金の全面禁止、
      贈収賄による逮捕後の説明会の義務化
 B若宮町→身内の請負契約の辞退届提出を義務化

こうしたことが先進事例となり、年々厳正な条例となったようである。
 今回お話を聞いたお2人は、法律の専門家として、県内各地の条例制定に審議会委員長等の形で携わってこられた。また、1995年からは『政治倫理九州ネットワーク』(本部:筑紫野市)を設立し、福岡県内はもとより、全国各地で条例制定に向けた指導をされている。
 両氏によれば、いずれの自治体においても、議員、特に建設業者等との関係が深い議員からの反発があったようであるが、住民をも巻き込んだ議論を進め、厳正な条例を制定させたとのことだ。
 次に、斎藤、糸山両氏に行ったヒアリングの中で、特に主だった質疑応答をまとめてみることにした。


(3)主なヒアリング内容
●政治倫理条例の効果について

質 問 政治倫理条例の目的は何か?
答 え この条例には基本的に罰則はない。あくまでも公開に徹して、市民の批評を仰ぐことが目的である。
質 問 効果はあるのか?
答 え 職員の採用や、工事の口利きという腐敗の温床を未然に断ち切ることにより、一定の効果があったと考えている。
質 問 政治倫理条例を制定しながら、首長や議員に逮捕者が出た自治体があると聞いたが・・・?
答 え そういう自治体があるのは事実。しかし、いわゆる『骨抜き条例』をつくった所がほとんどであることを見逃してはならない。
質 問 政治倫理条例の効果を最大限発揮させるには、どうしたらいいのか?
答 え あくまでも公開に徹する条例であるから、議員だけでなく、市民や有権者のチェックを受けやすくしておくことが肝要であろう。そのためにも市長を対象者に入れて、審議会に第3者が入れる環境を整えるべきである。(諮問機関は市長しか作れない)よって、真岡市で市長を含めた4役を対象に入れたことは評価できる。

●『議員の活動を拘束するものだ』等の疑問について

質 問 今回、真岡市議会にて話し合いを進めていく中で、『議員の活動を拘束するものだ』という疑問が相次いでいるが?
答 え 福岡県内にも厳しい条例が誕生しているが、そういうことは全くない。自己や自企業に有利な計らいをしたい議員の活動は拘束されるだろうが。
陳情や要望は、議員の正当な活動として認められる訳だし、職員に対して苦言を呈するのは当たり前である。また、個人に企業団体からの献金を禁じているのは、『政治資金規正法』に依っていることだ。
質 問 では、政治家のどんな行動が規制されるのか?
答 え 前に述べた通り、自己や自企業に有利な取り計らいをした場合や、自分に息のかかった職員の昇進を促した場合などが挙げられる。反対している議員には、そういうことを目論んでいる人が多いのではないか。
質 問 『立候補をしようとする人材に制限を加えるものであり、憲法違反だ』という意見も出ているが・・・?
答 え 憲法に定められているのは、あくまでも『公共の福祉に反しない限り』において、ということであり、政治運営の公正さを確保するためには、こうした条項を定めることはやむを得ないことだと認識している。 また例えば、兄が議員を辞めていて、弟が公共事業に関わる企業を経営していたら、会社を辞めなければいけないか、といえば違うわけで、別の自治体の仕事ならば問題ない。
付け加えるなら、議員は『地位』であって『職業』ではないことも忘れるべきではないだろう。
質 問 裁判になったケースはあうか?
答 え ある。最近では熊本県南関町にて、議員が『政治倫理条例は違憲である』という訴えを起こした。1998年(平成10年)2月17日に『合憲である』との判決が言い渡され、原告である議員が敗訴している。
また、首長等や議員の請負を禁止している、地方自治法第92条の2について、地方自治法の制定にあずかった当時の自治省幹部、長野史郎氏(のちの岡山県知事)は、著書『逐条地方自治法』の中で、『実際において、議員がそれら配偶者や子弟の請負について実質的な支配力を及ぼし、全く配偶者や子弟の請負は名目のみで、実質はその議員が請け負っているのとなんら異ならないような場合もありうるのであって、このような事態も同じく本条[第92条の2]の規定の趣旨から極力避けなければならないところである。実際の運用において注目されなければならない点と考える』と指摘しており、これは現在、法律関係者共通の解釈となっている。

●その他

質 問 現在、全国各地で進められている市町村合併との兼ね合いで、これまでに制定された政治倫理条例は、合併後どのようになってしまうのか?
答 え さいたま市のように1度廃止(大宮市が制定していた)して再度議論をしているケースもある。また、福岡県内の宗像市と玄海町で対等合併した時は、より厳しい宗像市の条例に合わせていた。これは自治体間でどのように話し合いが進められるか、ということに尽きる。
質 問 理想的な条例を作るためには、今後どのようにしていけばいいのだろうか?
答 え 真岡市のように議員だけで議論を進めた場合、理想的な条例を作ることは、なかなか難しいと考える。やはり、住民を巻き込んでの議論が大切であろう。


(4)所見

 今回のヒアリングは、これまで政治倫理条例検討委員会にて議論を進めてきた中で生まれてきた疑問を整理することが大きな目的であった。法律の専門家である斎藤、糸山両氏のお話を聞いていく中で、この条例が決して議員の正当な活動を拘束するものではなく、また憲法等に抵触するものでもないことが再確認できたことは有意義であった。
 また今回は、政治倫理検討委員会にも提出した、政治倫理条例・中村案についてもご指導いただき、『法律的に問題ない案である』と言われ、大いに自信にもなった。
 さて現在、栃木県内では5市2町で政治倫理条例が制定されている。大半が、真岡市で起きた受託収賄事件をきっかけに、議員等が自ら襟を正そうと制定されたものであることは、『震源地』の議員として肝に銘じなければならない。 特に平成14年9月に施行された足利市の条例には『2親等以内の親族が市との請負契約等から辞退するよう努めなければならない』旨の文言が記されるようになり、条例の内容も厳しくなってきている。
 今後、真岡市がどういう条例を作るかは、周辺自治体からも注目を浴びることになるだろう。少なくとも、『骨抜き』との批判を拭いきれず、政治不信を増長するものであってはならない。 できるだけ迅速に、そしてより理想的な内容を盛り込んだ条例を制定させなければならないと、議員の1人として考える次第である。




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