PI制御方式による恒温槽温度コントローラの製作

-放射線測定器のペルチェ素子による冷却と温度制御-

 2006年にダイオードの温度特性を測定する目的で恒温槽を製作した。加熱と冷却ができるようにペルチェ素子を利用した。ペルチェ素子を制御する温度制御回路も自作した。恒温槽内の温度の変動を0.1℃に押さえることを目標とした。制御回路は単純なON-OFF制御を採用した。恒温槽の温度を測定するダイオードの温度と設定温度を比較してペルチェ素子に加える電圧の正負を切り替えて加熱・冷却をおこなう方式であった。
  短時間に温度を変えて測定することが多かったので長時間の安定性は問題にはならず大変便利であった。設定温度と到達温度に偏差が生じたが、設定温度を調整して目的とする温度にする事で対応できた。  PID制御にして目的とする温度にピタリと設定できる装置に改良したいと考えながらも、特にそのような用途はなかったので、今まで改良は手つかずだった。しかし、放射線測定器をペルチェ素子で冷却するシステムを制作することになったので、恒温槽の制御回路を流用して測定器の温度を一定にして温度ドリフトから解放されることを目指してPI制御回路に改良した。
 PI制御の回路図を示す。以前の回路との比較するために変更点を切り取った。(なお、以前の回路の電力増幅部の回路が一部間違っていたので修正した。)PID制御としなかった理由は、今までの基板の空きスペースに回路を組んだが、これ以上回路を組み込むスペースがが無かったためで、特に深い理由は無い。
 今までコンパレータとして利用してきた部分は差動増幅回路として、設定温度と現在の温度との誤差を出力する回路に変更し、その誤差を増幅するように変更した。比例制御部(P制御)のゲインが大きすぎると大きなリンギングが生じたり発信したりする。この場合27kΩの抵抗を小さくして調整する。積分制御(I制御)の時定数は10MΩと10μFで調整する。あまり特定数を大きく過ぎると収れんするのに時間がかかり、小さすぎると発信する。色々変えて調整した結果、回路図の定数に落ち着いた。
 設定温度を変えたときの温度変化を次のグラフに示す。大きく温度を変化させるとオーバーシュートが目立つが300秒程度で設定温度に収れんした。

 

放射能測定器のペルチェ素子による冷却と温度制御 

 シンチレータの光をPINフォトダイオードで検出する方式放射能測定器である。フォトダイオードの暗電流がノイズになり温度が高くなると急激にノイズが増加する。そこでペルチェ素子によりフォトダイオードを冷却することでノイズレベルが減りスペクトルの分解能も向上する。今までの装置では室温より10℃温度を下げるのが限界であった。そこでペルチェ素子や放熱板として利用しているCPUクーラーを大型の物に変え冷却能力を向上させ、同時に温度制御も行って、ゲインの温度ドリフトから解放される事を期待した。
 温度制御をするために、PINフォトダイオードの温度を測定するために、リニア-温度センサLM35を組み込みこんだ。センサーは冷却用のアルミに密着させた。なお、このときサウンドカードのマイク入力端子から、LIN入力端子に信号入力端子を変更するために、約500倍の増幅器を付け加えた。マイク入力端子からLIN入力端子に変更した理由はソフトウエア上の入力ボリュームの設定の再現性が悪いので、ソフトウエアのボリュームをMAXとして、増幅器の半固定ボリュームで丁度良い値に設定したかったからである。