物理実験用電源装置

物理の実験で利用する電源装置を製作した。

1.性能

・定電圧電源装置で出力電圧0V〜30V,最大電流3A
・設定した電流値を超えると定電流電源に移行する。
・電圧,電流値は大型LEDデジタルパネルメータ(DPM)で表示する。

2.想定している利用

○電圧・電流を大型DPMで表示し,電流・電圧の値を教室の生徒全員で読み取れる。これで以下の実験が可能になる。
・オームの法則のプチ演示実験 
・非線形抵抗の電流−電圧特性曲線の測定。
 (一斉授業で演示実験で電流−電圧を読み取り特性曲線を描かせる)
・抵抗の並列接続のプチ演示実験

○定電流電源として,電流値を設定して動作させられるので
・電流が作る磁場の実験で,コイルの抵抗値に左右されず電流を一定に設定できる。
・一定電流で一定時間コンデンサーを充電してコンデンサーの容量の測定が可能になる。

3.製作

  古い電源装置をばらして主要部品を再利用して製作した。電源トランスは生徒が実習で製作したものである。制御回路は一から製作した。制御トランジスターの放熱にはCPUクーラーを利用した。ファンは5Vで回転させているので風量は減るが音は静かである。定電流動作させたとき,出力電圧が0V付近で3Aの電流が流れると,100W程度の熱損失が制御トランジスターで発生する。この電力には耐えられないので,出力電圧が12V以下の時にはトランスのタップを切り替えて熱損失を抑えるようにしてある。  電流値は電源装置の電流検出抵抗の電圧降下をDMPで読み取っている。この抵抗は制御回路のフィードバック回路の内側にあるので,電流計の存在で電流が流れることによって生じる電圧降下は完全に無視できる。

 

 

4.回路図

 

5.回路の説明

 フォローティング電源という方式で,制御用OPアンプのグランドが電源装置の出力線につながっている。OPアンプの耐圧以上の出力の電源装置が実現できる。
 上側のOPアンプが定電流制御用で,0.1Ωの抵抗での電圧降下が+入力端子の電圧を超えると動作し,電流値を一定に制御する。この時下側の定電圧制御OPアンプはプラスに飽和し動作していない。この出力をLEDでモニターし,定電流動作していることを表示する。
 電流計は,定電流制御用の抵抗0.1Ωの電圧を測定して電流値を表示する。無負荷でも0.1Ωの抵抗に電流が流れているのでオフセット電圧が発生するので,390k+2kの半固定抵抗でキャンセルする。電流測定の抵抗がフィードバック回路内になるので,電流計の内部抵抗による電圧降下はキャンセルされる。

電流計部

 PM-1029Bの200mV端子を利用して1.999Aまで測定できる。ただし2V端子が無いので,19.99Aまでの測定時は10分の1の分圧回路を挿入する。(ただしこの電源装置は3Aまで)レンジの切り替えにあわせて小数点の一も切り替える。
 電流の分解能は1mA,10mAになる。

電圧計部

 PM-1029Bの20V端子と200V端子を切り替える。同時に小数点の位置も変える。分解能が10mV,100mVになる。