波源駆動装置の製作(PIC16F84A)

 

 水波投影装置は波源に小型スピーカを,光源にPowerLEDを利用します。それぞれの駆動にオーディオアンプ,LEDをON・OFFするドライバー回路,波面をアニメーションさせるために2つの正弦波発信回路を使います。波面を静止させるだけならば,LEDドライバーだけを自作して,発信器・オーディオアンプは既存のものを使う方法もあります。
 今までの水波投影装置は大型で使いづらい点がありました。今回製作した装置はLEDを波源に同期して点滅させることで,今まで流れて見えなかった波面が観察できるようになりました。同時に波源としてスピーカを利用することで高い振動数を発生させることが可能になり,振動数の高い波つまり波長の短い波を利用して現象の観察ができるようになりました。このことが装置を小型にすることを可能にしました。          
(1)正弦波発信回路
 PIC12F675を利用してデジタルで設定する正弦波発信回路を実現しました。0.5Hz〜500Hzまで,0.5Hz分解能で発信可能です。
 PIC12F675はリセットされると最初に発信周波数をシリアル通信で受け取り,その周波数でずっと発振を続けるように動作します。
 発振周波数を制御する側は,リセットピンをLowレベルにして,次に発振周波数のデジタルデータを送信します。
(2)周波数コントロール回路
 専用の周波数コントロール回路を設計しました。できるだけ簡単にしかも安値にできるように考慮しました。
 作りやすさを考慮して,スイッチ類はすべて基盤にハンダ付けします。なお電池での動作をイメージしています。周波数の設定は2進数4桁のスイッチで設定します。また,UP,DOWNのスイッチで1Hz(×10の時は10Hz)単位で増減させる方式です。水波投影装置に利用する場合この方式の方が使い勝手は良好です
(3)LEDドライバー回路          
 5Vの電源を使い,抵抗をLEDと直列に入れて電流をあわせる方式です。LEDの特性に合わせて抵抗値を調整します。
 入力に正弦波信号を入力しますと,設定した電圧値を上回った時にLEDが点灯します。設定値を上げていきますと,正弦波の山の付近だけで点灯しますので,点灯時間が短くなりシャープが水波が得られます。当然代償として明るさは失われます。
(4)製作
 (1)〜(3)の回路をまとめてプリント基板を作りました。
 
 
 
 
 
 −動作の概要−
ア.周波数を4個のスイッチで設定します。
イ.×10のスイッチで周波数が10倍になります
ウ.ABスイッチがBの時,リセットスイッチを押すと上記のルールで周波数を設定すると同時に発信器Aは発信器Bより0.5Hz低い周波数で発信します。
エ.スイッチが静止で波面が静止し動画で波面がゆっくり動きます。
オ.スイッチを点灯にするとLEDが常時点灯します。この時1.5Ωの抵抗はかなり発熱しますので火傷には注意してください。
カ.スイッチを点滅にするとLEDが発信器Aの信号に同期して点滅します。ボリュームを調整すると点灯する時間が変化しますので,投影される波面のシャープさを調整できます。
 この回路を製作してOSC_Bの出力をオーディオパワーアンプのAUXにつなぎ,スピーカを駆動すれば水波投影装置の駆動回路が完成します。
 私はパワーアンプを組み込んだ一体型の装置を製作しました。一つは乾電池で動作するタイプで,小出力のパワーアンプ1chを内蔵させました。
 2つ目は秋月のパワーアンプキットを2ch組み込んだタイプで,水波投影以外にもOSC_A,Bの出力を別々のスピーカから発生させるとうなりの実験が可能になります。電源はACアダプターを利用しました。
 
 
 パワーアンプを除いた部品代はおおよそ2千円でした。この金額にLED,パワーアンプなどの金額が加算されますが1万円でおつりが来ると思います。(人件費を入れると高額になると思います?)
 − 部品の購入先 −      
(1)PowerLEDの購入先
 http//www.audio-q.com/ audio-Q 
 http//www.led-paradise.com/ LEDパラダイス
(2)電子部品の購入先
 http//akizukidenshi.com/ 秋月電子通商
 http//eleshop.kyohritsu.com/ 共立電子
 http//www.marutsu.co.jp マルツパーツ館WebShop
5.秋月パワーアンプキットを使った製作例
 水波実験機で波源を駆動するパワーアンプに秋月電子通商のキット「東芝TA7252AP(モノラル)オーディオアンプキット,500円」を利用した装置の製作を紹介します。
(1)キットの改造
 水波実験機では数Hz〜100Hzの超低周波領域を利用します。秋月のキットはオーディオアンプですから,20Hzで増幅率が30%程度低下します。そこで低域特性を改善するために次の改造を行います。
 @C5を1000μから2000μに変更。C7の1000μをC5と並列に接続する。
 AC7は1000μの代わりに470μをつなぐ。(470μは別途用意する)
 BR2は100Ωとする。(100Ωは別途用意する)
 CC2を470μとする。(470μは別途用意する)
 DC1に余った47μを使う。
          
                               
(2)ミューティング回路・電源回路の追加
 電源を入れたときにスピーカから大きな音が出ます。そこで電源を入れてから少し時間をおいてリレーをONにする回路を付け加えます。なお電源を切るとすぐにリレーはOFFになります。
 電源は秋月の15V,3.8AのACアダプターを利用します。そしてLED点滅回路の5Vの電圧は12V3A大容量可変型スイッチングレギュレータHRD12003E(秋月で300円)を利用します。可変抵抗で電圧を変えてLEDに流す電流を調整できるようになります。1Aに設定します。
 
 実態配線図に従って,100円ショップ購入した透明な整理用箱に回路を組み込んでみました。
 基盤取り付けるスイッチは部品面ではなく,基盤面に取り付けました。
 2つの点波源による干渉実験では,それぞれの波源で発生する波の振幅をそろえたほうがきれいな干渉が観察できます。そこで,アンプを2台,スピーカを2個使って波を発生さます。従ってステレオアンプになりますのでバランスを付け加えて調整します。
 正弦波発信器も2台内蔵しています。通常は一方が波源用,他方がLEDとし,周波数を0.5Hz単位でずらして動画を表現しています。これを,それぞれのアンプに振り分けてスピーカから再生すると,うなりの演示実験ができます。
 4桁のスイッチで設定できる周波数は5Hz〜75Hzまで5Hz単位で,UP・DOWNスイッチで1Hzずつ増減できます。この周波数帯は水波投影装置で利用します。
 ×10にスイッチを設定すると上記に周波数が10倍になります。この周波数帯はうなりの演示実験に利用するのに都合がよい周波数です。
 
 
 写真は400Hzと200Hzの信号波形です。きれいな正弦波を発生します。発信周波数は0.5Hz〜2kHzまで設定できますが,ローパスフィルターのカットオフ周波数を500Hzに設定していますので,500Hzを超える周波数は急激に振幅が小さくなります。また,秋月のパワーアンプキットは直流は増幅できないので,10Hz以下の周波数では振幅が小さくなるのと同時に波形のひずみも大きくなります。
 このような制限はありますが,水波投影装置,うなりの実験にも十分利用できます。