直列共振回路の実験

●サーボメータ

 RCサーボを利用した電圧計を使った直列共振回路の演示実験です。PICを使ったメータの2号機を2つ製作し利用しました。このPICを使った電圧計をサーボ・メータと呼ぶことにします。回路構成は1号機と同じですが,メータに仕上げるあたり回路をアクリルのケースに収めコンパクトにしました。また交流電圧を測定するためにAC-DC変換アダプターも製作しました。勿論黒板にありつけて使うことを想定しています。

サーボメータ正面写真

AC-DC変換アダプター サーボメータ裏面

●直列共振回路の演示実験

 直列共振回路の実験にりようしました。RLCの直列共振回路で,R=47Ω(51Ωと560Ωの並列),L=1mH,C=0.47μFです。共振周波数は7.3kHzです。共振周波数でのコイル,コンデンサーのリアクタンスは47Ωです。RLCをベニヤ板に張り付け,周波数を変えたときのリアクタンス変化を見るときの周波数の確認にスピーカーも取り付けてあります。

実験 メータのつなぎ方に注意して実験を見て下さい

(1)コイルとコンデンサーの電圧

 共振周波数7.3kHzにあわせたときのLとCの両端の電圧を各メータが示している。共振したときはコイルのリアクタンスとコンデンサーのリアクタンスが等しくなっている。従ってそれぞれの両端の電圧が等しくなる。
 直列共振回路であるから(抵抗とコイル,コンデンサーが直列に接続されているので),RLCに流れる電流は等しい。

(2)抵抗とコンデンサーの電圧

 コンデンサーの両端の電圧と抵抗の両端の電圧を比較した。電圧は等しい。(1)と(2)から抵抗,コイル,コンデンサーの抵抗値は等しい事がわかる。

(3)交流電源の電圧とコンデンサの電圧

 低周波発振器の電圧とコンデンサーの両端の電圧を比較した。結果は写真のように等しい。交流電圧はメータが示すように1.5Vであるので(1)(2)から
  1.5+1.5+1.5=1.5
   R   L    C   電源
となる?
不思議?

実験の解説

(A)抵抗の電圧と L+C の両端の電圧

 コイルとコンデンサーをまたいだ電圧は写真のようにゼロになっています。回路には電流が流れていることは抵抗の両端の電圧から確認できます。
 この理由は,コイルに発生する電圧は流れる電流に対して90°(π/4)位相が進みます。コンデンサーの場合は電流に対して90°位相が遅れます。結局コイルの電圧とコンデンサーの電圧は位相が180°(π/2)ずれています(逆位相)。逆位相の波を重ねると打ち消しあってゼロになるのでこのような結果になります。

(B)抵抗値を半分にすると

 抵抗の値を半分の23Ωにすると今までの2倍の電流が流れます。LとCをまたいだ電圧はゼロなので,電源電圧を抵抗で割り算した電流が流れます。しかし,コンデンサの両端の電圧のみを観察すると(コイルでも同じ)リアクタンスは同じなので,電圧は2倍になります。電源電圧の2倍の電圧が発生していることになります。(抵抗値が半分でも電流が2倍になったので,抵抗両端の電圧は同じ)

●まとめ

 直列共振回路では,共振周波数ではコイルとコンデンサーの両端の電圧がゼロになるのでオームの法則から考えて電気抵抗がゼロになったことと等価です。従って共振周波数で最大の電流が流れることになります。


 

●授業での利用風景(直列共振回路の演示実験)

・授業プリント

 デジタル表示の電圧計は読み取り誤差が無く,誰でも正確な値を測定することができる。また自作する場合でも,大型の7セグメントLEDを使えば簡単である。しかし,電圧や電流の変化を見る場合など,数値がちらついて見づらいなど,アナログ式・デジタル式にはそれぞれ一長一短がある。
 PICを使って針式のメータ(アナログ式)を自作した理由は,正確な数値として測定する事は,物理的な概念形成を目的に行う演示実験などではベストではないとの考えからである。現象を理解する場合,どう変化するかを調べることが多いからである。例えば電池の内部抵抗は,電流の増加と共に電池の両端の電圧が減少していく変化を知れば十分であり,あえて内部抵抗を求めることはしない。この直列共振回路でも,共振周波数で電流が最小になることを知れば良い。
 メートルブリッジのガルバノメータでもゼロを求めればよいので,細かな数値を云々することは案外少ない。このように色々と持ち出してみたが,針式のメータは細かなことを隠してくれて本質を浮き彫りにするような使い方に大変便利である。

・回路図