波源の製作

 水波投影機で利用する波源として,故小森先生が製作した波源を利用してきた。板バネの先端にモータを取り付け,その軸にゴム管の先端におもりをつけた単純な振動源である。モータが回転するとおもりが回転中心よりずれ,振動を起こす。機構が単純で故障はないが,うまく波が観察できるように調整するのが意外に難しい。電源装置で電圧を可変して回転数を調整し振動数を変化させるが,バネの持つ固有振動数と共振しないと振幅が稼げず苦労する。このような事から,2つの波源の間に生じる腹の数を可変させるようなことは難しい。


一号機

 そこで一号機(写真1)として,クランクを利用してピストン運動をする機構の波源を製作した。このような仕組みにすることで固有振動数からの束縛を回避でき,振幅を稼げるからである。同時に,電気接点をもうけて,リレー(半導体リレー:SSR)を動作させOHPのランプを点滅させ,動く波が止まっているように見せる事にも挑戦した。(小森先生から出された課題であった)
 残念ながら一号機はかなり強い振動が発生し,水面によけいな振動の発生が目立ちすぎた。失敗であった。波源を電子回路の発信器にたとえると,寄生振動や高調波が多数生じて,信号の純度がかなり悪い装置であると言える。(振動数を高くできない)

 二号機は,おもりの上下動で振動を発生させる仕組みに戻した。ただし,逆回転する2つの軸におもりを取り付けたので,左右の振動は打ち消され,理屈の上では上下動しか生じない。おもりにはナットを利用した。ナットの数で振幅を調整する。
 実際に利用した結果,十分実用になる波源である。しかし,基盤に利用したプラスチックの板が持つ固有振動数に影響されるため,波源の振動数を自由に可変できない問題がある。 

  

 波源の振動数を自由に変化できる装置を作りたいと考えていたが,モータを利用した機構では難しい。そこでスピーカの往復運動を利用した波源を製作した。スピーカに手持ちの小型スピーカ(0.2W)を利用し,振動板をはぎ取り,中心部分に接着剤で図のようなプラスチックの板を取り付けた。スピーカを駆動するために超低周波発信器を製作した。発信器で駆動するため,振幅と振動数を別々に設定できる。また2個のスピーカを利用するため同・逆位相の設定も可能である。
 試作の段階であり,振動を伝えるアームの質量が大きすぎたり,スピーカのピストンモーション領域が小さいなどの問題点はあるが使いやすい。

右の写真は三号機で発生させた波である。振動数は比較的容易に可変できる。また,波源を固定しているスタンドなどを含めたシステムの固有振動数に,スピーカの振動数が一致するとガタガタと振動を生じるが,振幅を調整すると回避できる。もう少し改良すると大変使いやすい波源になる。

   

 スピーカのボイスコイルを利用した市販品がないか調べてみると,大変高価な装置が販売されている。しかし,汎用品を使って少し工夫すれば自作は簡単に出来る。
 2つの波源から生じる波の干渉の様子を波と同期する光源で止まって見えるようにしたいと考えてスタートしたが,デジタルカメラで撮影し,ビデオ出力をプロジェクターに投影すれば難なく実現できる。またビデオカメラ(デジカメでも可)で撮影するとき,フレームレートと波の振動数の関係を微妙にずらすことで,スローモーションのように波が広がりながら干渉していく様子が観察できる。