波源の作り方

 水波投影装置は大変優れた装置です。そしてとても簡単な装置です。十分自作可能と思います。そこで写真を出来るだけ沢山使って装置の作り方を説明します。寸法は水槽が30cm×30cm×5cm程度になるようにすればOKです。
 水波投影装置は,発振器・LED駆動回路の電子回路と,水槽・波源に分かれています。電子回路は実験室にある発振器とパワーアンプが利用できます。LED駆動回路だけをを自作すれば完了です。
 最後に電子回路の作り方を解説します。

1.波源の作り方

 波源にはスピーカを利用します。今回利用したスピーカは秋月電子で購入した直径10cmの物です。スピーカのエッジが丈夫そうな物なら,どのような物でもOKです。
 3mm厚のベニヤ板,写真パネルに使う発砲ポリスチレンボードを準備して,振動板にあわせて丸く切ります。発砲ポリスチレンボードは100円ショップで購入できます。今回は写真部が使った切れ端がゴミ箱に捨ててあったので少し厚手のも(7mm)を利用しました。

 ベニヤ板の中心に3mmの少し長めのビスをとおしてナットで固定,ゆるみ防止の意味でビス側に接着剤を塗布しておきます。
 写真の様に振動板とベニヤ板にボンドを塗って接着します。両方に接着剤を塗って半乾きの状態になったらベニヤ板が水平になるように気をつけて取り付けます。

 ベニヤ板を取り付けた後,発砲ポリスチレンの円盤を接着剤で接着します。
 この写真用パネルを丸く切って取り付ける理由は,スピーカからアームを横にのばすので,このアームがスピーカのエッジにぶつからないようにするための間隔を確保するためです。ですから現物にあわせて適当な厚さのボードを利用すればOKです。ただ出来るだけ軽い方が良いと思います。


 

2.平面波用波源の製作

 平面波用波源は写真の用に発泡ポリスチレンの板を使って作ります。厚みにもよりますが,適当に補強します。作成には接着剤を使って作ります。ただスピーカーの取り付けにはナットで固定しました。
 垂直に取り付ける水面をたたく板に関しては,写真の用にその長さを決めました。点波源用の波源と同じ水面でちょうど良くなるように気をつけると,波源を変える度に水深を調整する必要がなくなります。

3.点波源の製作

 長さ23cm,幅1.5cmに発泡ポリスチレンを切ってアームにしました。その先端にまち針を取り付けます。アームを補強するために幅1cmに切って写真の用に接着剤で貼り付けました。アームは先端部はカッターで削って細くしました。
 9mm厚のベニヤ板にスピーカのおしりがぴったりおさまる穴をあけて取り付けます。平面波用はさらにホットボンドで固定しますが,点波源はなめらかに回転できるようヤスリをかけてそのままにしておきます。こうすることで,2つの点波源の間隔を自由に変えることが出来るのと,スピーカを回転させるとドップラー効果の実験が出来ます。
 今回利用したスピーカが重たいのと,アームが軽量なので,ベニヤ板に接着する必要はありませんでした。


 

4.水槽の製作

 水槽は3mm厚のアクリル板で製作します。そして水槽を固定し,波源をセットするための部分をベニヤ板で製作します。

 

 ちょうどアクリル水槽が内側にはまるようにします。

 波源をのせる部分はボルトとナットで取り付けてあります。これは上下に動かすことが出来るようするためです。波源の厚みによって調整します。これで水面をたたく部分がいいあんばいで水面と接するようにできます。

 水槽の上にアクリル板をのせられるようにしてあります。写真の4本の足を交換することで水面からの高さを変えられるようにしました。足は水槽を作ったときの余った板を3枚貼り合わせて作ります。このとき,真ん中に挟み込む長さを両脇のアクリル板より短くします。この隙間を水槽にはめ込めばぐらつくことはありません。


 

 水波投影装置は天井に投影して初めて性能が発揮されます。しかし,写真の様にアクリル板の上にトレーシングペーパーをのせて観察することも出来ます。
 LEDと水面の距離で投影される像の大きさが変わります。この装置ではアクリル板を取り付けた方法と同じ方式で,水槽をささえるベニヤ板に足を取り付けて距離を変えられるようにしました。自宅の天井に投影する場合,天井が狭くて波面を映しきれないので,45cmの足を取り付けて映像を小さくしました。
 教室で使うときは足を30cmにするとちょうど良い大きさで天井に水波が投影されます。


5.LED駆動回路

 次の回路がLEDを点滅する回路です。LM393はコンパレータですが,最大でも数100Hzの点滅ですから,OPアンプ,たとえばLM358などの単一電源OPアンプで代替え可能です。このコンパレータは入力信号(発振器から入力される正弦波)が,100kΩのボリュームで設定した電圧を超えると出力がHIGHに変化してMOSFETをONにします。FETがONになれば1.2Ωの抵抗をとおしてLEDに電流が流れ発光します。LEDは電流の最大値が規定されているので,許される範囲で最大になるように1.2Ωの抵抗値を調整します。仮に1Aの電流が流れるとこの抵抗で1.2Wの電力を消費しますので定格電力は2W程度必要になります。MOSFETは,ゲートに加える電圧でDS間の抵抗が変化します。利用したNchMOSFETは秋月で購入しましたが,これ以外でも4V程度で完全にON(DS間の抵抗が殆どゼロ)になるタイプなら何でも良いはずです。ただ古いタイプのFETには10V程度の電圧が必要になるものもあるので規格表で確認する必要があります。マイコンのI/Oポートで直接駆動できると説明されているFETならOKです。

 スイッチを常点に切り替えるとOPアンプの出力はHIGHになるので,FETを点灯状態にたもつことが出来ます。スイッチを点滅に切り替えると,100kのボリュームで設定した電圧より入力信号の振幅が上回ったときのみ点灯します。信号が正弦波の場合,振幅に近い電圧に100kΩのボリュームで設定すると,点灯する時間が短くなります。従ってこのボリュームで投影される波面の山のあたりでのみLEDが点灯するように調整でき,シャープな波面を投影するように調整できます。入力信号の電圧は1V程度が適当です。あまり大きな振幅の正弦波を入力すると点灯する時間をボリュームで調整できなくなります。

接続の仕方

 接続は図のようにします。発振器の出力電圧は1V程度で常に一定にします。波源の振幅はパワーアンプのボリュームで行います。
 周波数を変えるたびに投影される波面がきれいに見えるようにパワーアンプのボリュームで波源の振幅を調整する必要があります。この理由は水波がレンズとなって天井に波面を映し出しますので,波面の波長が変化するとレンズの曲率が変化するためです。