乾電池1本で5本のLEDを光らせる回路

 単3電池1本で白色LEDを光らせる電子回路を製作しました。秋月のキットは白色LED1本がやっと光る程度で懐中電灯の代わりにはなりませんが,この回路ならば実用になります。

 

単4電池利用小型タイプ

 単4電池1本で白色LEDを点灯する回路をはじめに製作しました。

 タイマーICで発振して昇圧します。56Ωの抵抗での電圧降下が約0.6Vを超えると制御用トランジスタがONになりタイマーICをリセットし発振を停止し電流を一定に制御します。タイマーICは自分自身で昇圧した電圧を使っています。単4アルカリ電池で2時間ほど点灯します。LED2本直列では電流を10mA取り出すことはできないようです。従って制御回路は休止状態で動作しています。また効率は良くありません。

 図の回路で2.4k,4.7k,1000P,560を24k,47k,100P,4.7kに変えると効率が向上することを確認しています。

 

昇圧回路の研究

 図の回路でトランジスターがONすると,コイルに電流が流れ始めます。コ

イルに電圧を加えても誘導起電力が発生して,急には電流は流れ始めません。従って徐々に電流が増加しコイルにエネルギーが蓄えられます。

 次にトランジスターがOFFすると今まで流れていた電流を流し続けようとする向きに起電力が発生し,Vinにこの電圧が加算された電圧が出力されVoutとなります。このような仕組みで入力電圧より高い電圧を得ることができます。

 

コイルに流れる電流

 ここで図の回路でスイッチをONにしたときの回路に流れる電流の時間変化を計算してみます。まずキルヒホッフの法則から。

次に両辺をtで微分し整理すると

 

次にこの式を解くと

    

ここでt=0でi=0,t=∞でi=V/Rより,

@

この式をもとにコイルに流れる電流を計算してみます。V=1.5V,R=1Ω,L=47μH,の値を用い,クロック周波数10kHzでは,最大1.3A,100kHzでは0.29Aとなります。

 

 昇圧回路として動作させる場合,クロック周波数は100kHz程度を選ぶので,この周波数では,電流は時間とともに直線的に増加します。t≪1の場合expは次のようにテイラー展開できるので導けます。

A

高速でスイッチングした場合,コイルに流れる電流は時間に比例して直線的に増加することになります。

 

コイルに蓄えられるエネルギー

 一回のスイッチングでコイルに蓄えられるエネルギーは,P=1/2Liより計算して,スイッチがONしている時間をton とすれば,

fHzでスイッチングすれば,このエネルギーの蓄積を1秒間にf回繰り替えします。また1周期の時間の間にONする時間の割合をD(デューティー比)とすれば

ですから,1秒間に蓄積されるエネルギー,つまり電力Wは

B

B式で表すことができる。B式をもとにVin=1.5V,R=0.5Ω,H=22μH,D=0.1〜0.9で周波数fを変えながらコイルに蓄えられる電力を計算すると次のようなグラフが得られる。

 

 

単3電池利用高出力タイプの製作 

 単3電池1本から1W程度の電力は取り出せるので,単3電池1本使用で,できるだけ明るいLEDライトを作ることに挑戦しました。

 効率を上げるためにやはりスイッチング素子にはパワーMOSFETを利用する必要があります。しかし単4電池利用小型タイプのトランジスタをFETに変えただけでは発振がスタートしません。2V程度の電源電圧が必要です。従って乾電池1本ではまずFETをドライブできる電圧まで制御回路用の電圧を昇圧させる必要があります。

 

ブロッキングオシレータで制御回路の電圧を発生させる 

 パワーMOSFETをドライブするためにブロッキングレギュレータで電池の電圧を10V程度まで昇圧します。殆ど電力を消費しないのでダイオードは1S1588を利用しました。コイルは1mHのRFCのコイルをほどいて,代わりに0.32φのホルマル線をよじって約17回巻き付けて自作しました。(バイファイラー巻)

   

 2本束ねてコアに巻き付け,一方の巻きはじめと,他方の巻き終わりを接続する。(バイファイラー巻)そして電池のプラス側に接続します。 

 上のグラフが入力電圧対出力電圧の特性で,約0.6Vで発振がスタートします。無負荷で11mWの電力を消費します。

 

製作

 C-MOSタイプの555タイマーとパワーMOSFETを使って昇圧回路を作ります。フィードバックループは無く半固定抵抗でデューティを変化させて出力を調整することにしました。この回路が昇圧回路です。ゲートに取り付けた56Ωが無いと異常発振をします。

 220kの半固定抵抗で出力を調整するとき,ONデューティを徐々に大きくしていくと出力が増えていきます。しかし,あまり大きくしすぎるとFETが常にONの状態になり過大電流が流れますので注意が必要です。

 利用したFETは10年ほど前に秋月で購入したNチャンネルMOSFETです。FETの特性は,IRFR010 BVDSS=50Vmax ID=8.2Amax [RDSON=0.16Ωtyp. VGS:10V、ID:4.2A]でONにするにはGS間に10Vの電圧が必要です。22μH1.6Aのコイルも秋月で購入したのもです。全体の回路図は次のようになります。

 ブロッキングオシレータとFETを使った昇圧回路を別々に作ったので,最後にドッキングしました。大まかな部品の配置図も下に示します。

 この回路を秋月の電池ボックスに組み込みました。出力には白色LED×4+赤色LED×1を直列につなぎました。最後に昇圧回路とLEDの間に電流計を入れての約20mAの電流が流れるように半固定抵抗を調整します。

性能

 製作した昇圧回路の効率を測定しました。入力は1.5Vで,半固定抵抗でONデューティを変えて出力を変化させて測定しました。負荷は560Ωの固定抵抗です。

 効率は約70%で,まずまずです。出力も0.5W以上は出ますが,ONデューティの調整が微妙になり,少し雑に回すと過大電流が流れてしまいます。またONデューティを上昇させると出力が増大しますが,電池のレギュレーションの関係で出力が低下する場合がありますのでゆっくり・じっくり調整する必要がありますので注意してください。

 写真のようにかなり明るいライトになりました。白4本に赤を1つ混ぜた理由は,赤を混ぜることにより色の再現性が向上するのと,ライトビームを確認しやすくなるので明るく感じます。白だけでは何となく明るい感じになってしまいます。

 この写真はLEDが点灯中のMOSFETのゲートの駆動信号の波形で,時間軸は2μs/div,電圧軸は5V/divです。発振周波数は139kHz,ONデューティは0.86となっています。

 ブロッキングオシレータは0.6V程度で発振するので,電池の電圧が0.6V程度に下がっても,暗くはなりますがLEDは点灯するはずです。試しに使い古したマンガン電池を使い点灯させると,電池の端子電圧が0.6VでもLEDはそこそこ明るく光ります。ニッカド電池を使う場合過放電に注意する必要があるかもしれません。

 

 

 LP-112D17WC-5 (3.2V,150mA,30lm)を光源として製作しました。100mAの定電流回路としました。今までのユニバーサル基板では穴の間隔が一定で高密度実装ができないので,手書きのプリント基板として製作しました。