LA1600を利用したAMラジオ

 AMラジオ用IC,LA1600(三洋)を使ってラジオを試作した。これまで科学技術の実習でスーパーヘテロダイン方式のAMラジオを製作してきた。しかし,2008年度,突然予算が35%カットされた。この状態では予算不足で今までと同じ実習はできな。そこで予算削減のために色々と見直しを始めた。その一つとしてICを使い部品点数を削減して経費の節約になるか試みた。
 今まで,「ブラックボックス化するのは良くない」との方針で,AMラジオは全てディスクリート部品で製作した。基板もフォトエッチングし,本格的な製作実習である。しかし,部品点数が多いので経費もかんだ。これをIC化すれば部品の削減で安くできるだろうと見積もった。
 結論から言うと,安くはできるが,早く仕上がるので,時間的に次の実習を行う事になり,トータルでは安くならないと判明した。些か間の抜けた答えである。しかし,こんなに簡単にできるのかと,改めて感心した。取りあえずその製作レポートをまとめることにした。

 

●主要部品の入手先

 主要部品は右の表の販売店より通販で購入した。バリコン,フェライトバーアンテナ,OSC,IFT(黄)は一般的な6石スーパーの部品である。なおスピーカは秋月で購入した。

主要部品名

入手先

LA1600 マルツパーツ
SFU455KU2A 秋月電子

●回路図

 三洋半導体規格表の応用回路例(2)を参考にして設計した。最初,低周波増幅回路も応用回路を参考に製作したが,手持ちの部品の関係でこのような回路にした。どの程度の音量が得られるか少し心配したが,秋月で購入したスピーカーの能率が良いので十分な音量と音質が得られた。
 回路図中の0.01μFを調整すると周波数特性を調整できる。0.001μにすると10kHz程度までフラットになる。音声を聞いた感じで値を調整すると良い。個人的には0.01μで高域を落とした方がいい感じに聞こえた。
 低周波増幅回路は反転増幅回路で,入力インピーダンスでゲインが変化する。0.001μで,入力インピーダンスを10k〜100kΩまで変化させた時の特性は次のグラフのようになる。このグラフは電子回路シミュレータPSpiceで計算した。

 この回路は乾電池2本(3V)で動作させる。最大出力はどの程度得られるかPSpiceで計算した。計算結果が下図で,振幅は0.4V程度得られる。スピーカの能率が良ければ十分である。

●実態図

●作り方

 部品の配置は実態図を参考にすれば良い。製作はユニバーサル基板を使い,配線は部品の足を使って結線する。特に注意する点はない。
 写真が自作したラジオである。100円ショップで購入した整理用の透明ケースに組み込んだ。低周波増幅回路は別基板に作った。

●調整法

 下手に調整をすると聞こえなくなるので注意が必要だが,それ程,躊躇する必要はない。ただし調整に使うドライバーはトリマー調整用の特殊な物(先端だけが金属)を使わないとうまくいかない。
 はじめに,とにかく受信できか同調ダイアルを回してみる。NHK第1と第2はよく受信できるはずだ。次に上の写真のバリコンの裏側にあるトリマーコンデンサー(写真の左側)の容量を最小にする。写真でもわかるように金属板の重なり具合が少なくなる位置に合わせる。この状態で受信できる放送局で周波数の最も高い局を何とか探す。次に右側のトリマーを回転してこの放送局の音量が最大になるように調整する。
 このような簡単な調整でもかなり良好に受信できる。なお,全く調整しなくてもある程度実用になる。ただし調整をしないと周波数の高い放送局が受信できないようである。従って上記の調整は周波数の高い放送局を受信できるようにするための調整と考えてもらいたい。